書 評   


  本書は、新しいタイプの、新しい人たちをターゲットにした測量の教科書といえるであろう。
  そこには、ふたつの挑戦的特徴がある。
  ひとつ目の特徴は、数学、地球科学、力学、電磁気学といった測量の基礎となる学問についても記載されていることである。特に数学、また全般的に基礎に多くの字数が割かれている。これは本書の中にも解説されているが、高校レベルの数学や物理の知識を身に付けていない学生にも測量の知識を身に付けさせるための苦悩のようで、この挑戦が功を奏することを期待したい。
  ふたつ目の特徴は、伝統的な測量の教科書が踏襲している測量法の枠にとらわれず、国土を測る技術として整理しているところである。その意味では評者の測量という記述は不適切かもしれないが、著者が測量から未だ命名されていない国土を測る技術を体系化しようとする挑戦は端緒についたばかりで、現状では測量として捉えておいてもよいであろう。
  体系化の挑戦は、データ処理、測量機器による位置計測、画像を用いた位置計測、地球規模での位置決定、衛星リモートセンシングによる位置計測、衛星リモートセンシングによる物体判読の基礎、画像処理、地理情報処理システムの順で構成されている。位置を決定し、情報を作成し、利用していくという流れである。
  GPSやGIS、情報通信技術の発達にともない、いろいろなものが地球上の位置と照合した利用が可能となり利便性が大きく向上している現在、それらを分かりやすく整理し伝える挑戦は価値がある。今後、はGPS測量や空間情報の品質・交換についての充実を期待したい。 

                                                         (津留 宏介)      


【 月 刊 「測 量」 7月号より 】 
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